新しい糖尿病の薬

2015-08-05

  私が大学を卒業した1980年頃の糖尿病の治療薬は、インスリンとスルフォニル尿素剤(SU剤)、ビグアナイド剤の3つしかありませんでした。インスリンは注射製剤のため、患者さんも医療者側も使うにはハードルが高く、まずは経口剤から開始するのが一般的でした(今でもそうですが)。経口剤のビグアナイド剤は当時、それを使うと血液が酸性になって命を落とすこともあるとの報告が欧米で相次いだため、日本ではほとんど使用されていませんでした。従って実際は、経口剤としてはSU剤がもっぱら使われていました。SU剤は膵臓を刺激して、インスリンの分泌能を高める薬で、使い始めは血糖が低下し、糖尿病のコントロールは改善しますが、やがて自分でインスリンを分泌することが出来なくなってくると、再びコントロールは悪くなってきます。

  1990年代になってビグアナイド剤の有用性が見直され、さらに新しい糖尿病の薬が次々と開発されてきたため、インスリンを開始するまでの期間を相当遅らせることが出来るようになりました。今では7種類もの経口糖尿病薬が使われています。

  理想的な糖尿病薬は、①確実に血糖は下がるが、低血糖は起こさない、②体重が増加しない、③服薬回数が少ない(11回)、④長期間インスリン分泌能を保つ、⑤安価であるといったところでしょう。SU剤は血糖降下作用が強い代わりに、低血糖の危険性も高く、やがて自分のインスリンを枯渇させてしまいます。体重増加作用もあります。ビグアナイド剤は低血糖も少なく、体重増加作用もなく、安価ですから、肥満の糖尿病には第一選択薬となっています。ただし原則、13回服用しないといけません。

  近年よく使われるようになった経口剤としてはDPP-4阻害剤があります。これは食事をすると小腸からインクレチンというホルモンが分泌されるのですが、インクレチンは膵臓に働いてインスリンの分泌を高めます。しかしインクレチンは小腸で速やかにDPP-4という酵素によって分解されるため、その酵素の働きを弱めようというのがDPP-4阻害薬です。この薬は11回の服用で良く(1日2回の薬もある)、低血糖も体重増加作用もほとんどないことから理想の糖尿病薬に近いと言えます。後発品がまだ出ていないので、薬価が高いのが難点です。

  さらに昨年からは、SGLT-2阻害薬という薬も発売されました。これは腎臓での尿糖の排泄を促進させる薬で、従来の糖尿病薬とは全く違った作用によって血糖を下げる薬です。この薬は体重を減少させる効果もあるので、若くて肥満の方に有用とされています。但し発売間もない為、薬価が高いのが難点です。糖尿病の治療の基本は食事療法と運動療法であり、これは昔から変わっていません。薬はこれらの土台があってこそ、効果が発揮されるということを忘れてはいけません。

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