ピロリ菌について

2010-01-12

 胃炎や胃潰瘍は、以前はストレスによって起こると考えられていました。ところが、1980年代にオーストラリアのロビン・ウォレンとバリー・マーシャルという二人の医師が、胃の中に住み着いている細菌が胃潰瘍の発生原因であるということを突き止めました。従来胃の中は酸性が強いため、細菌は住みにくいと考えられていましたが、この細菌はウレアーゼという酵素を発生しており、このウレアーゼが胃の粘液成分の尿素を分解してアンモニアを産生します。アンモニアは強アルカリ性のため胃酸が中和され、その結果細菌自体が胃の中でも住みやすい環境にしていました。この発見により、二人は2005年にノーベル賞を受賞しました。細菌の名前は、胃の出口(幽門)に住み着いていたため、幽門(ピロルス)という名前をとってピロリ菌と名付けられました。
 ピロリ菌は衛生状態の悪い水や食物から感染し、日本人の約50%が感染していると言われています。特に40歳以上では7割の人が感染していると言われています。これは昔、水道が発達する前に井戸水が使われていたためと考えられています。上下水道が発達した現代では、若年者ではピロリ菌の感染は少なくなっています。
ピロリ菌はその後、胃癌の発生にも深く関係していることが分かってきており、日本人で胃癌が多いのは、塩分の摂り過ぎとピロリ菌の感染が原因と言われています。従って、ピロリ菌を殺してしまえば、今後胃癌の発症は減ってくると予想されます。
ピロリ菌の検査は、胃カメラで行う方法と、呼気を分析する方法、血液検査や便検査で調べる方法などがあります。胃潰瘍を繰り返す人は、胃カメラ施行時にピロリ菌の検査をします。ピロリ菌陽性であれば、菌を殺す「除菌療法」をお勧めします。これは1週間、2種類の抗生物質を服用してピロリ菌を殺す治療です。ピロリ菌が死んでしまえば、その後潰瘍の再発は減り、胃癌になる可能性も減少します。除菌療法によって、以前は9割の成功率でピロリ菌は死滅していましたが、最近は耐性菌(抗生物質に効きにくいピロリ菌)が増えており、成功率は7割程度に下がっています。
 ピロリ菌の有無は、血液や便を調べることで簡単に検査出来ますが、これらの検査で陽性と出ても、胃カメラ検査で胃潰瘍か十二指腸潰瘍と診断されなければ、保険を使って除菌療法は出来ません。現在消化器系の学会では、除菌療法の保険適応を拡大するように厚生労働省に働きかけています。

Copyright© 2010 堺医療生活協同組合 All Rights Reserved.Produced by ©UmedaPrinting.